治療方針

食事が大切です

「私たちの身体は、私たちが食べたもので出来ている」ということばを大切に考えています。

医療の父と言われた古代ギリシア人ヒポクラテスは、「汝の食事を薬とし、汝の薬は食事とせよ」という言葉を残し、「病気は食事療法と運動によって治療できる」と述べ、「食べ物で治せない病気は、医者でも治せない」とまで言っています。

私たちは精神科医として向精神薬を漫然と処方するような医療はしません。

こころとからだの不調の根底に食事や栄養の問題が横たわっていることは少なくありません。

食事に関する問題は生活習慣の問題であることもあり、生活習慣に由来する種々の病気と同様に精神や神経の不調も起こり得ます。

診察では詳細な問診のなかから健康上の問題へとフォーカスしていきます。

その過程で栄養学的な問題が疑われる場合には適宜血液検査などを実施しながら内臓の状態、細胞レベルでの身体の働き具合の評価をおこないながら、食事や運動などの生活習慣の指導と、それでも足りない場合にて適切な薬剤の選択のもとに薬物療法を実施します。

「治る力」を育てる

当院に通院している患者さんのなかには、現在はお薬を服用していない状況の方もいらっしゃいます。

薬にたよらないでお一人おひとりの身体の中で「治る力」を育てるお手伝いをすることも私共の治療の大きな柱です。

種々のストレスに対し適切な対処ができずに溜め込んでしまうと、こころとからだの不調ができあがっていきます。

ストレスに反応してそれをからだの外に出すのには、言葉にして表現する(愚痴を聞いてもらう、カウンセリングを受けるなど)言語化と呼ばれるプロセス、身体を動かして発散する(カラオケで絶叫する、全力で疾走するなど)行動化と呼ばれるプロセス、そしてあまり健全とは言えないのが頭痛や動悸、めまいなど身体症状として表現する身体化と呼ばれるプロセスなどがあります。

小さな子供が学校に行きたくない朝にお腹が痛くなるのは身体化の一例です。

言語化も行動化もできず現れてきた身体症状にも耐え忍んでばかりいると、抑うつ気分や希死念慮、幻聴や妄想などの精神症状が出てくることがあります。

ここまでくると症状化と呼ばれるプロセスに陥っており、「気合いと根性」では治せません。

そんなわけで、当院での治療は患者さんのお話をしっかりと聞き、適切な診断のもとに負担や苦痛のすくない治療の選択肢をお示ししながら、みなさんの体のなかで治る力(自然治癒力)を育てていくことを目指します。

健康を蝕む生活習慣には、過食や運動不足のほかに、睡眠を削って頑張りすぎることや、感情を押し殺してひたすら耐えること、物事の悪い面ばかりに目をむけて心配を手放さないことなども含まれます。

出された薬を漫然とのむことを、私たちは治療とは呼びません。当院では適切な薬物療法と精神療法を中心に提供しています。